代々の小林家当主は「酒は水しだい」と考え、多くの井戸を掘り、現在使用する水を探し当てたのが1697年(元禄10年)。その当時「酒母のゆるみよく、味のり上々吉、寒造りの使用可然」という結論を得たこの水は、糸魚川産ヒスイの原産地であるヒスイ峡付近からの伏流水で、軟水が多い日本国内では珍しい中硬水(アメリカ硬度130ppm)の水です。また、同じ町の中でも水に恵まれていない地区もあり、この場所が創業時より酒づくりに適した土地である事を物語っています。
新潟県の主力酒米である五百万石を中心に、たかね錦、山田錦、越淡麗を使用しており、県内産の酒米を中心に酒づくりをしております。近い地域故に、お互いの顔が見える関係にあり、その年々の様子を理解し情報交換できる関係性である事がより良い酒づくりに繋がっております。新蔵では、以前と比較し原料の状態をより見極め各工程を行えるようになりました。今まで以上に「米づくり」を意識した酒づくりが可能となり、米の特性と自蔵の特徴である「硬水」との相性を考えながら「加賀の井の味づくり」を行っています。
今回を含め過去に数回の大火を乗り越えてきた加賀の井酒造は「つくる事は育むこと」を理念に「今年より来年はより良い物を」と常に向上心を持って取り組んでいます。幾度の困難を乗り越えて前に進めてきた先人と同様に、伝統を未来につなげる酒づくりを一丸となって取り組んでいます。前例がないからこそ基本に忠実に行う。今の私達が最も酒づくりにおいて大切にしている事です。
「酒は食事と共に」という蔵元の思いを基に酒づくりを行っています。 中硬水の仕込水の特徴を活かし「芯の通った旨味と、後味のキレのバランス」を追求しております。酒蔵の裏手に広がる日本海の「幸」である白身魚、南蛮海老、蟹など上品で繊細な味わいの素材に合う酒。これこそが地の物との相性を意識した私達が考える酒づくりです。